『インサイド・ルーウィン・デイヴィス』でオールド・ギブソンのサウンドにひたる!

日々のこと
Paweł SzmajduchによるPixabayからの画像

ミュージシャンや音楽をテーマにした映画が好きだ。

インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』:監督コーエン兄弟(2013年)は売れないフォークシンガー、ルーウィン・デイヴィスの或る1週間を描いた映画。

時は1961年。場所はニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジ。かつてはデュオで活動していたが相棒の死によって今はソロで歌っている。『Inside Llewyn Davis』というアルバムを出したが売れないし、ガールフレンドには見放されて金もない。

ひょんなきっかけで世話をする羽目になってしまったネコを持主の元へ返しに行かなくてはならないが、泊まる場所にさえ困っている。自分がミュージシャンであることにこだわるルーウィンのやることは、どれもあまりうまくは行かないが、やめないことが彼の誇りなのだ。

本作は60年代のグリニッジ・ヴィレッジでのフォーク・ムーブメントで活躍したデイヴ・ヴァン・ロンクの自伝が元になっているが伝記ではない。映画の中でルーウィンはデイヴ・ヴァン・ロンクのナンバーを歌っているし、演奏に出向くガスライト・カフェにボブ・ディランが出演(映画でもディランっぽいシンガーがチラッと出てくる)していた事実もあるので、ルーウィンがデイヴ・ヴァン・ロンクと重ね合わされているが、ストーリーは別物だ。

ルーウィン役のオスカー・アイザックはジュリアード音楽院出身で、ギターの演奏と歌は全部自分でこなしている。

ところで、彼が映画で使用しているギターはギブソンのオールド・モデルだ(モデルはLG-2?)。オールドというのは今から見てオールドなわけで、当時は皆が普通に使っていたモデルだ。劇中で使用されている物はヘッドの「Gibson」のロゴが現行とは異なっており、筆記体ふうのものが使われている。1940年代の仕様だ。

なので、映画の設定が61年だから、ルーウィンはそのギブソンを15〜20年くらい愛用していたことになる。

この頃のギターにはこの時代特有の響きがあって、今は入手出来ない木材が使用されているとか、ボディの裏のブレイシング(補強の骨組み)が若干違うとか理由はいろいろあるのだろうけれど、音が違う。

きらびやかではないが、ボディの底で響くような無骨で芯のある音。”鳴らないギター”と言ったらヘンだが、地味で渋いサウンドだ。そういったことは、その時代のミュージシャンの音源を聞けばわかるのだが、録音がしょぼいせいで”枯れたサウンド”になっている要素もあるので、本当のところはわからない。50年前のガスライト・カフェに行くことができればいいのだけれど。

ビジュアル的にはサウンド・ホールのあたりの木材の感じとか、ちょっと厚めのピックガードとかに心惹かれる。映画で使用されているモデルは、茶色のサンバースト仕上げ(タバコ・サンバースト)だが、子どものころ田舎の家で見た古い箪笥のような質感を思わせて、やさしくなでてやりたくなる。

ギターはさておき『インサイド・ルーウィン・デイヴィス』に戻ると、映画では全編にフォークソングやトラッド、ブルースが流れて時代の空気がよく伝わってくる。ルーウィンが仕事を求めてシカゴへ行くところは、ロードムービーの要素もあって好きな展開だ。

ガールフレンドにメッチャやり込められても、見知らぬ男呼び出されてボコボコにされても、ルーウィンが惨めに見えないのがこの映画のいいところ。

男はこんなふうにかっこよく生きないとね(女も)。

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