吉田勝次『洞窟ばか』は面白すぎてヤバい!

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ノンフィクション

冒頭いきなりだけれど、吉田勝次の『洞窟ばか』(扶桑社)はかなりヤバい本である。

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本書のオビには”『クレイジー・ジャーニー』に登場した、あの隙間にもぐる変な人!”とある。

どんなふうに変な人なのかと思い、カバーの見返しを見てみると本人の写真が載っていて、なるほど普通のオッサンにはない強いオーラを発している。

およそ自分の事を「◯◯ばか」と公言して憚らない人は尋常でない業績やキャリアを持っている場合が多い。普通の人が言ったところで「今ごろ気がついたの?」と返されるのがオチだ。その点、吉田氏は有言実行。洞窟探検のプロフェッショナルだ。

本書のプロローグに、深さ300mの縦穴の底で肩に落石を受けて負傷する場面が描かれている。石が当たった衝撃で吹っ飛ばされるが、気を取りなおして(どうやって!)みると、大きな外傷がないので、”おれはひとまず、安堵した”とある。

”洞窟探検において大きな外傷は致命的だが、骨折は大したケガではないのだ”とつづく。そして彼はその体で30時間をかけ、ロープ1本で300mを登り返して生還するのだ。

・・・ヤバいでしょ?

本書で語られるのは、氏が洞窟探検に目覚めてからのさまざまな体験とエピソードだ。国内も海外も入る洞窟は違っても探検の興奮と充実感はまったく変わらない。

”これまで、テレビ番組や自身のブログなどでどんな洞窟を探検してきて、どんな絶景に出会ったり、どんなヤバい状況に遭遇してきたのか、面白おかしく語ってきた”とある。

本書の筆致も”面白おかしく”というのが基本だけれど、読み進むにつれて吉田勝次という人が、洞窟探検という行為に於いてまったくぶれのないぶっとい芯の通った人物であることがわかってくる。洞窟への愛と情熱がハンパないのだ。

日本ケイビング連盟会長、洞窟プロガイド、撮影、学術調査、洞窟ガイド育成と、洞窟に関わることならなんでも請け負うという彼の「洞窟人生」がこの本には詰まっている。

わたしは狭いところが怖いし好きではないが、なぜか洞窟には関心がある。

20年以上も前のことだが本書にも登場する日本一長い鍾乳洞である安家洞(岩手県)へ行ったことがあり、入口で貸与のヘルメットをかぶって500mほどの区間を歩いた。観光洞窟としては地味だし狭くて長い。

公開されている部分の終点には頑丈な鉄格子があって「これより先進入禁止」と書かれていた。この先にまだ数千メートルも暗闇が続いているのかと思うと、すごくドキドキしたことを覚えている。

吉田氏が言うには、自身は「洞窟病」に感染しているとのこと。重症化すると治療は非常に困難で、主な症状は「真っ暗闇の中をどこまで行っても、その先の風景を欲して、さらに先へ、奥へと進んで行きたくなる」というもの。

そこでふと不安になる。わたしが安家洞で味わったドキドキは、病気の初期症状だったのではないか?

安家洞の後、同じ岩手にある龍泉洞と滝観洞をハシゴしている。もっと告白すると、秋芳洞(山口)、龍河洞(高知)、玉泉洞(沖縄)といった有名処をはじめ、そこそこの数の洞窟(鍾乳洞)を訪れている。狭い所はコワいのだが、暗闇自体はそれほどでもない。つい行ってみたくなる。本書の刺激によって、病は活性化するのか?

そう思うといろいろと不安になってくる。

そう、この本は何かとヤバい本なのである。

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