グーグルマップで追っかけよう!『88ヶ国ふたり乗り自転車旅』1/2からの続き
旅を始めて6年9ヶ月、2度目のインドを走り終えて72,000キロを走破し、ふたりは自転車を交換する。これだけの距離を走れば自転車にもガタが来る。
消耗品や壊れたり折れたりした部品は交換すればよい(というかそれが当たり前)が、フレームのヘタりは別だ。剛性が落ちたフレームではペダルの駆動力が効率よく路面に伝わらないし、何よりふたりの命を乗せて走る最重要パーツなのだ。
”キャノンデール・ジャパンさんの協力を得て”新しい自転車に替えたと記述にあるが、年間1万キロを走る旅に見合うスペックを持った自転車であればそこそこの予算が必要だ。
海外では、タンデムは自転車のスタイルとしてわりと一般的で、各種メーカーがお手頃なものからハイグレードなものまで用意している。ふたりが選んだ自転車のフレームは最初はクロモリで2台目はアルミ。サンタナというタンデム自転車専業メーカーは、カーボンチューブとチタニウムのハイブリッドフレームで車体重量13キロというスーパーバイクを作っている。タンデムでその軽さはオドロキだがお値段もスゴイ。
ところで、日本ではタンデム自転車の公道走行に制限があり、全国で16の府県(2017年11月時点)でしか定員乗車、つまりふたりで乗ることができない。単純にふたり乗りはダメというのが理由らしいが、ひとりでしか乗れないタンデム車というのは悲しい。
四国と本州を結ぶ豪快な橋と美しい島々の絶景が味わえるサイクリングの聖地しまなみ海道(愛媛・広島)をはじめ、上信越や九州、関西などの地方では本格的なタンデム自転車でのサイクリングが楽しめる。ちなみに東京都はダメ。
さて『88ヶ国ふたり乗り自転車旅』も後半に突入。
真冬の東欧を走り抜けて、ふたりはトルコへとやって来た。国境に架かる橋の欄干がちょうど真ん中でギリシャ・カラーの青からトルコ・カラーの赤になる。モロッコ以来久しぶりのイスラム圏だ。
中近東・アフリカ・アジア・ふたたび南米編
9部 中近東篇
トルコ 74days 1,493km
トルコ特有のモスクがあちらこちらで目にとまる。そこここでチャイを振舞ってもらい、トルコ料理も楽しんだ。カッパドキアを通ってシリアへと向かう。
シリア 16days 450km
首都ダマスカスを出ると荒涼とした大地が広がる。見所が沢山ある国だが猛暑が来る前に先を急ぎたいので、あまりゆっくりはできなかった。
ヨルダン 10days 472km
ヨルダン・バレーは世界最低所。海抜マイナス400mの地点に塩分濃度が高い死海が広がる。
イスラエル 4days 17km
イスラエル南部のエイラットはヨーロッパの小国のようでセンスが良い街だった、
エジプト 53days 196km
カイロの暑さはハンパない。バックパッカー御用達の宿「サファリホテル」に5週間滞在した。
10部 アフリカ篇パートⅡ
ケニア 6days 159km
ナイロビは赤道に近いが高原の街。丈の低い灌木がまばらに生えるサバンナの草原を走る。
タンザニア 45days 1,114km
サバンナ地帯はタンザニアに入っても続く。インド洋に面したダルエスサラームに近づくと強烈な日差しが迫ってきた。
マラウイ 34days 934km
小国マラウイは世界で最も貧しい国のひとつとされるが、人々は好奇心に溢れ、屈託のない笑顔を浮かべていた。
モザンビーク 5days 273km
風景や人々の暮らしはマラウイとあまり変わらないようにみえる。270kmの行程を5日間で抜ける。
ジンバブエ 42days 1,177km
10月はジンバブエがいちばん暑い季節。ジリジリと太陽に焼かれながら広大な樹海の中を行く。
ザンビア 3days 71km
ジンバブエ側の入場料が高くて見られなかったビクトリア・フォールズを見学した。
ボツワナ 1days 18km
キャンプ場の敷地内にはサルやレイヨウが歩き回り、バレーボール大の像のフンが落ちている。早朝にはサルの群れが横切っていった!
ナミビア 36days 1,382km
首都ウィントフックから南下し、フィッシュリバー・キャニオンへと進む。ロングダートを満喫したが、ここは猛暑地帯だ。サイクルメーターの液晶が焼け焦げてしまった。
南アフリカ 62days 1,474km
テーブルマウンテンを眺めなごら、高層ビルと開拓時代の建物が混在する街ケープタウンに入り、さらにアフリカ大陸南端の喜望峰へ。南十字星もこれで見納めだ。
11部 アジア篇パートⅡ
トルコⅡ 60days 1,733km
真夏の南アフリカから真冬のトルコへやって来た。ここでひと組の日本人タンデムサイクリスト西畑夫妻と合流。Wタンデム隊となる。
イラン 58days 1,558km
英語も通じるし最初に思っていたよりも普通の国っぽい印象のイラン。ちょっとしたトラブルはあったが、まだ旅は続く。
トルクメニスタン 9days 506km
ビザの取得に手こずりながらも、なんとか入国。道路標識がほとんど無く、分かれ道のたびに皆で首をひねる。
ウズベキスタン 26days 716km
「青の都」サマルカンドはシルクロードのオアシスとして栄えた町。日差しが強烈でアスファルトが粘土のように柔らかく、自転車のタイヤがめり込む。脳天が溶けてしまいそうな暑さだ。
カザフスタン 13days 499km
高原都市シムケントに到着。町並みは近代的でバザールには商品が豊富だ。沿道の人々の優しい心づかいに感謝。
キルギス 32days 637km
キルギスは平均海抜2,950mの山岳国家。秘境湖イシククル湖は琵琶湖の9倍の広さの青い湖面には天山山脈が浮かんで見えた。
カザフスタンⅡ 6days 248km
川原に西畑隊とテントを並べて野宿。ウェアを洗い、体も洗った。中央アジアのゴールだ。
中国 40days 1,091km
イスタンブールから約7ヶ月間、6,000キロを一緒に走って来た西畑夫妻とはここでお別れ。我々は南アジアへと向かう。標高4,090mのスバシ峠を越えてパキスタンとの国境クンジュラブ峠を目指す。
パキスタン 65days 1,471km
富士山より1,000mも高いクンジュラブ峠から山岳ルートを満喫し、イスラマバードのある低地帯へ。隣国インドへと向かう。
インド 15days 849km
「交通事情が悪い」「騙される」「暑い」という理由で予定になかったはずの国だったが、やはり来てしまった。都市部は車も人力車も牛車も入り混じって渋滞し、脱出が大変だ。
ネパール 53days 1,396km
ヒマラヤの景勝地ポカラから首都カトマンズに向かって荒れた路面を行く。カトマンズは居心地が良く16泊した。
バングラデシュ 8days 449km
バングラデシュの人口密度は高い。町の中心部ではサイクル・リキシャが怒涛のように行き交っていた。
インドⅡ 13days 107km
旅を始めて6年9ヶ月が過ぎ、72,000キロを走破してインドのコルカタにたどり着く。さすがにこれだけの距離を走るとフレームがへたってきて、自転車もそろそろ限界だ。4年半ぶりに帰国して自転車の交換だ。
南米篇 パート2
ブラジル 43days 1,080km
各方面からのご協力とご支援、そして若干の非難も浴びつつ再び南米へ。ブラジルでは日系人の方達のお世話になった。
パラグアイ 8days 304km
パラグアイにも日系人はいる。ピラポの町で開拓時代の苦労話などを伺う。
ウルグアイ 3days 162km
ウルグアイはブラジルとアルゼンチンに挟まれた小国。天気が良くても冷たい風が吹きつけて寒い。
アルゼンチンⅢ 50days 1,874km
4年半ぶり、3度目のアルゼンチンだ。パンパの大草原をアンデス山脈に向けて西へと走る。
ペルー 89days 3,007km
首都リマから南米の大動脈パンアメリカン・ハイウェイを真っ直ぐに北上。砂漠に点在する町や村をつないで走った。トルヒーヨにあるカサ・デ・シクリスタという南米を旅するサイクリスト達御用達の家にお世話になる。
エクアドル 21days 589km
ペルーを後にエクアドルへ。少しずつ赤道へと近づく。道端の食堂で焼きバナナに舌鼓を打つ。
コロンビア 9days 17km
一旦入国はしたものの、今後の日程を考えてエクアドルへUターン。あまり走れずに終わった。
エクアドルⅡ 5days 22km
キトからアメリカへ向かう。
北米篇 パート2
アメリカⅢ 171days 6,427km
エクアドルからマイアミにやって来た。US84号線に沿って西へと向かう。ラジオをつけるとカントリーミュージックが流れてくる。エルパソからモニュメントバレーを通り、ヨセミテを経てロサンゼルスに到着した。
アジア篇 パート3
中国Ⅱ 55days 2,590km
ロサンゼルスから4度目の一時帰国をして上海へ。一直線にベトナムへ向かう。
ベトナム 24days 899km
田園風景の中をハノイへと南下する。ベトナムの料理はとても美味しい、
ラオス 8days 499km
ラオスの田舎は未開拓のジャングルに囲まれている。アフリカで見た光景とも似てゆったりした時間が流れていた。
タイ 10days 507km
タイは日本と同じ左側通行だ。バックミラーをハンドルの右側に付け替えた。
カンポジア 9days 345km
カンポジアではアンコールワットの遺跡を訪れた。
タイⅡ 40days 1,546km
1月のマレー半島は常夏の太陽が照りつける。タイ料理は味付けは絶妙だけれど物凄く辛い。頭がカーッと麻痺してきて、耳がいっとき聞こえなくなるほどだ。
マレーシア 25days 824km
マレーシアの食堂も味も量も大満足。マレー料理、中華食堂、インド食堂とバラエティーも豊かだ。ジョホールバルからシンガポールへ入国した。
シンガポール 5days 62km
シンガポールは高層ビルもあるが意外と緑もおおい国。東京23区ほどの面積の国だ。
マレーシアⅡ 9days 358km
マレーシアのボルネオ島へ飛んだ。コタ・キナバルから郊外に出ると緑のジャングルやパーム畑が続き、密林の静けさを味わえる。
ブルネイ 6days 221km
ブルネイの面積は長野県の半分ほどの小国だが天然資源に恵まれたリッチな国だ。野菜やフルーツもすくすく育ち、魚介類も豊富な羨ましい環境。
マレーシアⅢ 19days 883km
自転車の後ろのタイヤを交換した。台湾製で800円程の値段だっだが3,000キロも走れた。次のやつはインドネシア製で約810円。
インドネシア 10days 333km
早朝、雨宿りをしていると子供たちご登校中。雨など全く気にせずびしょ濡れでも平気であるいている。「赤道記念碑」で記念撮影をした。自転車で赤道を超えるのは初めてだ。
マレーシアⅣ 29days 639km
パリッ・プンタールの町で、知人から紹介されたデビッドさんのゲストハウスにお世話になった。とても楽しくて12泊もしてしまった。
中国Ⅲ 89days 1,929km
雲南省から中国に入り、標高5,013mの峠を越えてチベットの中心地ラサに到着。旅も9年目に入り、サイクルメーターの数字がついに10万キロを超えた。ヒマラヤの白い峰々が美しい。
ミャンマー 16days 0km
チベット越えでエネルギーを使い果たし、ミャンマーではバスの観光。
フィリピン 45days 1,041km
バンコクからフィリピンのマニラへ。大小さまざまな島を楽しむ。エメラルドグリーンの海でシュノーケリングも。
台湾 45days 994km
8年前ニュージーランドで出会ったビッキーさんと再会。彼女は友人のピンキーさんとコンビで三年間で五大陸を走破しているサイクリストだ。彼女たちの知人を訪ねて泊まらせてもらいながら旅を続けた。
宇都宮一成・トモ子のふたりは、この後台湾北部の港町基隆から沖縄行きのフェリーに乗船して沖縄と九州を走り、一成氏の実家のある愛媛で10年半の旅を終えた。
エピローグで宇都宮一成はこう述べる。
僕たちが元気な笑顔でここへ戻ることができたのは、両親や友人、旅先で励ましてくれた人々のおかげだ。
そして、こんなにも長く僕の夢に付き合ってくれたトモ子さん、ありがとう。(p422)
もともと一成氏の思いつきから始まった旅とはいえ、その夢につき合ったトモ子さんは発案者よりもすごいかもしれない。
帰国後に「自転車で旅してきたようには全然見えない」といろいろな人たちから言われたそうだが、トモ子さんというヒトは、大量に浴びたはずの紫外線も、必ずしも愉快とはいえなかった体験も「そんなこともあったかしらねぇ」くらいの軽いノリでいなしてしまえる柔軟なココロとカラダの持ち主なのではなかろうかと想像する。夫唱婦随ではなくトモ子さんなりの旅を大いに楽しんだのだろう。
一成氏は現在「シクロツーリズムしまなみ」という自転車旅行の普及と地域の活性化を促進するNPO法人のガイドスタッフとして活動を続けている。10年間の旅を終えた後も、大好きな自転車と共に(もちろんトモ子さんとも)人生を歩んでいけるのは素晴らしい。
コメント